坂本家住宅は、愛媛県東温市の旧金毘羅街道沿いにあり、江戸時代後期から明治時代にかけて建てられた歴史ある古民家です。

主屋(おもや)北側外観
坂本家住宅の歴史
この地域は、江戸時代から旧金毘羅街道(讃岐街道)などが交わる交通の要衝で、宿場町として栄えました。幕末から明治初期には街道沿いに多くの商家が並び、活発な商業活動が行われていました。坂本家住宅も、そうした川上宿の歴史を今に伝える建物の一つです。
坂本家は代々この地で暮らし、江戸時代には酒造や油・綿実油の売買などを営んでいたことが記録からうかがえます。主屋は江戸時代後期にはすでに建てられていたと考えられ、明治時代になると家業の発展や暮らしの変化に伴って、大規模な改修や増築が行われました。新部屋や離れなどが加わり、現在の複雑で豊かな建物群が形づくられていきました。
江戸から明治へと時代が移り変わる中で、建物も家業や暮らしに合わせて姿を変えながら受け継がれてきました。坂本家住宅には、川上宿の繫栄と、そこで暮らした人々の営みを伝える歴史が刻まれています。

明治30年頃とみられる坂本家住宅周辺の風景
建物の特徴
坂本家住宅は、主屋を中心に、新部屋、離れ、蔵、大蔵、長屋門など、時代や役割の異なる建物が集まって構成されています。小規模な建物を除いて9棟ほどが残り、それぞれの建物の間には中庭などの空間が設けられています。
主屋は、街道に面して37mを超える長さを持つ大きな建物です。客を迎える「オモテ」の空間と、家族が暮らす「ウラ」の空間を併せ持ち、民家としての造りと商家としての特徴が入り交じっています。その後、家業や暮らしの変化に合わせて増改築が重ねられ、新部屋や離れなどが加わって現在の姿になりました。
主屋の土間には太い柱や大きな梁が見られ、伝統的な木造建築の力強さを感じることができます。新部屋には書院風の座敷や茶室風の空間、離れには客をもてなすための座敷が設けられています。また、かつて米を貯蔵した大蔵をはじめとする蔵も残っています。江戸時代から明治時代にかけての建築や暮らしの変化を、一つの屋敷の中で見ることができることが、坂本家住宅の大きな特徴です。

主屋の土間に架かる大きな梁
坂本家住宅の魅力
坂本家住宅の魅力は、建物の古さや大きさだけではありません。長い年月の中で、家業や暮らしの変化に合わせて手を加えながら、大切に使い続けられてきたことにあります。屋敷を歩くと、異なる時代の建築や人々の暮らしの痕跡を随所に感じることができます。
また、建物とともに残された古文書や生活道具なども、当時の暮らしや商い、地域とのつながりを知る貴重な手がかりです。建物だけを見るのではなく、そこに残された様々な資料を通して、かつての川上宿や人々の営みを身近に感じることができます。
坂本家住宅は、一軒の古民家でありながら、旧街道沿いに栄えた地域の歴史と文化を今に伝える場所でもあります。建物、資料、そしてそこで営まれた暮らしを一体として次の世代に伝えていくことに、大きな価値があります。

主屋の座敷東側にある欄間